運動前の準備運動はラジオ体操が最適!ストレッチはむしろ逆効果?
「ケガ防止のために運動前にはストレッチをしっかりやりましょう!!!」
このフレーズは、学校の体育や部活動、スポーツの現場などで、誰もが一度は耳にしたことがあるはずです。
しかし、「運動前の(静的)ストレッチは望ましくない」という考え方が、近年のスポーツ科学の知見で明らかになってきました。
そこで改めて注目してほしいのが、ラジオ体操です。
「子どもの体操」「高齢者向け」「簡単すぎる」というイメージを持たれがちですが、実は、ラジオ体操は、運動前の準備運動として非常に理にかなった構成になっています。
学校における体育の準備運動では、(静的)ストレッチを行うところも多いようですが、準備運動としてストレッチを行うことは望ましくないということに鑑みると、学校の先生方におかれましては、改めて、ラジオ体操に着目してほしいと、強く思っております。
※1998年(平成10年)の教育指導要領の改訂により、「体操」が削除され「体つくり運動」が新たに記載されました。これを機に、学校現場においては、ラジオ体操が行われなくなり、代わりに、ストレッチが行われるようになってきたと考えられています。
そもそも「準備運動」とは何か?

準備運動とは、運動する前に身体を温め、筋肉や関節をほぐし、ケガの予防やパフォーマンスの向上につなげるための運動です。
具体的に、準備運動の目的は、以下のように分類することができます。
- 心拍数を徐々に上げる
- 体温(筋温)を高める
- 関節の可動域を安全に広げる
- 神経系を活性化させ、動作のキレを高める
- ケガのリスクを下げる
多くの人が誤解しているのが、「準備運動=ストレッチ」という考え方についてです。
しかし、その考え方は誤り。むしろ、最新の知見によると、準備運動でストレッチを行うことは望ましくないともいわれております。
運動前の(静的)ストレッチがNGといわれる理由

一般的に「ストレッチ」といわれているものは、静的ストレッチを指します。
静的ストレッチとは、反動をつけず、約20~30秒、筋肉をゆっくり伸ばすストレッチのことです。
問題となるのは、静的ストレッチを「運動直前」に行う場合です。
一見すると、筋肉をしっかり伸ばしてから運動したほうが安全で、パフォーマンスも上がりそうに思えます。
しかし、近年のスポーツ科学・運動生理学の研究では、この直感とは逆の結果が数多く報告されています。
運動直前に静的ストレッチを行うことは望ましくないというのが定説になっているのです。
運動直前に静的ストレッチを行うことで、体の中では次のような変化が起こると考えられています。
- 筋力や瞬発力の一時的な低下
- 筋肉や神経の反応速度の低下
- パフォーマンス全体の低下
- ケガのリスクが高まる可能性
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
筋力や瞬発力の一時的な低下
静的ストレッチでは、筋肉を伸ばした状態で一定時間キープします。
この行為によって筋肉はリラックスし、筋緊張が低下します。
リラックス自体は悪いことではありませんが、運動直前というタイミングでは、筋肉が「力を発揮しにくい状態」になってしまうのです。
特に、
- 強く地面を蹴る
- 重いものを持ち上げる
- 素早く方向転換する
といった動作では、筋肉が瞬間的に大きな力を出す必要があります。
静的ストレッチ後の筋肉は、この「瞬時に力を出す能力」が一時的に下がりやすいことが分かっています。
筋肉や神経の反応速度の低下
運動パフォーマンスは、筋力だけで決まるものではありません。
脳からの指令が神経を通って筋肉に伝わり、適切なタイミングで収縮することで、スムーズな動作が生まれます。
しかし、静的ストレッチによって筋肉が過度に緩んだ状態になると、筋肉や神経の反応速度の低下し、
- 動き出しがワンテンポ遅れる
- 反応が鈍くなる
- 力の入り始めが不安定になる
といった影響が出やすくなります。これは特に、スピードやタイミングが重要な運動において、大きなデメリットになります。
パフォーマンス全体の低下
筋力・反応速度の低下が重なることで、結果として
- 走るスピードが出にくい
- ジャンプの高さが下がる
- 重量を扱いにくくなる
- フォームが崩れやすくなる
といった形で、運動の質そのものが落ちてしまう可能性があります。
「いつもより体が重い」「動きが鈍い」と感じる原因が、実は、運動前のストレッチにあるケースもあるのです。
ケガのリスクが高まる可能性
静的ストレッチ後は、筋肉や腱が一時的にゆるんだ状態になります。この状態で急に強い力が加わると、筋肉や腱が衝撃をうまく吸収できず、
- 肉離れ
- 筋損傷
- 関節への過剰な負担
につながる恐れがあります。
このように、運動前に静的ストレッチを行うことは、「柔らかくして安全になる」どころか、力を発揮しにくくし、結果的にケガのリスクを高めてしまう可能性があるのです。
重要なのは、ストレッチそのものを否定するのではなく、いつ・何のために行うのかを正しく理解することです。
実際に、運動後の整理運動などとして、静的ストレッチを行うことは非常に有効であります。
動的ストレッチこそが運動前の正解

運動前に推奨されるのが、動的ストレッチです。
動的ストレッチとは、体を動かしながら筋肉の伸縮を繰り返すことによって、血行を促進して体を温めるストレッチのことです。
サッカーの練習前に見かける「ブラジル体操」や日本国民であれば誰もが知っているであろう「ラジオ体操」は、まさに、動的ストレッチの典型例といえます。
動的ストレッチのメリットは、次の通りです。
- 筋温が上がりやすい
- 神経伝達がスムーズになる
- 可動域を実践的に広げられる
- パフォーマンスが向上しやすい
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
筋温が上がりやすい
体を動かしながら筋肉を伸ばしたり縮めたりすることで、血流が促進され、筋肉の温度(筋温)が徐々に上昇します。
筋温が上がると、筋肉はしなやかに動きやすくなり、急な負荷がかかった際にもダメージを受けにくくなります。
これは、寒い状態の体でいきなり運動を始めるよりも、ケガの予防につながります。
神経伝達がスムーズになる
動的ストレッチでは、実際の運動に近い動きを取り入れるため、脳から筋肉への指令が活性化されます。
その結果、動き出しが良くなり、タイミングのズレや反応の遅れが起こりにくくなります。
特に、スピードや瞬発力が求められる運動では、この効果がパフォーマンスに直結します。
可動域を実践的に広げられる
静的ストレッチのように止まった状態で伸ばすのではなく、動作の中で関節を動かすため、「実際に使える可動域」を安全に広げることができます。
これは、運動中のフォームの安定や、無理な動きを防ぐうえで非常に重要です。
パフォーマンスが向上しやすい
結果として、パフォーマンスの向上に直結します。
筋肉が温まり、神経が目覚め、関節がスムーズに動くことで、力を出しやすく、動きのキレも良くなります。
「体が軽い」「動きやすい」と感じやすいのは、動的ストレッチがうまく機能しているサインです。
ラジオ体操は最強の動的ストレッチ

ラジオ体操は、単なる「昔からある体操」ではありません。
運動前の準備運動という観点から見ると、ラジオ体操は非常に完成度の高い動的ストレッチだといえます。
最大の特徴は、全身をバランスよく、連続的に動かす構成にあります。
ラジオ体操では、腕・肩・背中・体幹・股関節・膝・足首などといった、運動時に負担がかかりやすい部位を、無理のない範囲で動かしていきます。
特定の部位だけに偏らず、全身をまんべんなく使うため、「体のどこかだけが準備不足」という状態が起こりにくいのです。
また、ラジオ体操の動きは、伸ばす・曲げる・回す・ひねるといった、人間の基本動作をすべて含んでいます。
これにより、筋肉だけでなく関節や腱、神経系まで同時に刺激され、運動前に必要な「体の連動性」を自然に高めることができます。
これは、単発の動的ストレッチをいくつも組み合わせるのと同等、あるいはそれ以上の効果を短時間で得られるという点で、大きなメリットです。
さらに、運動強度が絶妙に設計されている点も見逃せません。
ラジオ体操は激しすぎず、それでいて軽すぎることもなく、心拍数と筋温をゆるやかに上げてくれます。そのため、体が冷えた状態から一気に負荷をかけることがなく、運動前のウォーミングアップとして非常に安全性が高いのです。
加えて、ラジオ体操はリズムに合わせて行うという特徴があります。リズム運動は、神経の働きを活性化させ、動きのタイミングを整える効果があります。
その結果、運動開始時の「動き出しの重さ」や「ぎこちなさ」を軽減し、スムーズに本運動へ移行しやすくなります。
「何を準備運動としてやればいいかわからない」「つい省略してしまう」という人ほど、まずはラジオ体操を取り入れることで、運動前の体の状態が大きく変わるのを実感できるでしょう。
運動前に必要なのは、体をゆるめることではなく、安全に、そして気持ちよく動ける状態に整えること。
その点で、ラジオ体操は、まさに「最強の動的ストレッチ」といえる存在なのです。
最後に
学校現場では、体育の授業の準備運動で、ラジオ体操ではなく(静的)ストレッチを行うところも多いです。
(※ストレッチについても、筋肉を伸ばす時間が各10秒未満であれば、さほど、大きな問題にはなりません)
しかし、「準備運動=ストレッチ」という誤った認識を子どもたちに教えることに対しては、問題であると考えています。
前述しました通り、準備運動で静的ストレッチを行ってしまうと、運動パフォーマンスに負の影響をもたらすからです。
そこで、改めて注目してほしいのが、ラジオ体操です。
昔は、体育の授業の準備体操といえばラジオ体操でしたが、改めて、ラジオ体操に回帰してほしいと考えております。
正しく行うことで、準備運動としても、非常に大きな効果を期待することができます。ぜひ、運動前の準備運動でラジオ体操を行ってみてください。↓
私は、健康をテーマにした運動指導・講演会・セミナー、イベント出演等を行っています。
<取得資格>
・全米ヨガアライアンスRYT200
・1級ラジオ体操指導士
・国際ボディメンテナンス協会パーソナルストレッチトレーナー
・スポーツリズムトレーニング協会認定アカデミーコーチ
・基礎心理カウンセラー
大阪府門真市・大阪府寝屋川市を拠点に活動しており、その他エリアも出張可能です!
ラジオ体操やストレッチ・運動講習会、メンタルヘルス講演会、健康イベントを取り入れたいなど、興味がある方・企業団体様は気軽に「ラジねえ。」まで♪
投稿者プロフィール

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ラジオ体操・スポーツインストラクター
一般社団法人ラジーン代表理事(大阪・関西万博「TEAM EXPO 2025」プログラム/共創パートナー)
企業、自治体、スポーツ競技団体等年間100団体以上と協業し、健康に関する講習会や講演会を各地で実施。TVラジオなどのメディアにも出演し、ラジオ体操を通じて健康・スポーツの普及推進活動を行っています。
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