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2025.12.22

健康経営の推進に資する運動促進の取り組みとは?

健康経営の推進に資する運動促進の取り組みとは?

近年、日本の企業の間では「健康経営」という考え方が広がってきました。

これは、従業員の健康を単なる福利厚生ではなく経営資源として捉えて、戦略的に健康づくりへ投資することで、生産性向上や企業価値の向上を目指す取り組みです。

健康経営の取り組み事例は、様々ありますが、「運動の促進」も健康経営の促進につながります。

運動不足は生活習慣病やメンタル不調の要因となり、欠勤・プレゼンティーズム(出勤しているが十分に能力を発揮できない状態)を通じて企業経営に大きな影響を及ぼします。

ここでは、健康経営の基本的な考え方から、運動促進がなぜ重要なのか、そして企業が実践できる具体的な運動促進施策までを、体系的に解説してまいります。

健康経営とは

ウォーキングする女性

健康経営とは、従業員の健康保持・増進を単なる福利厚生や個人任せの自己管理に委ねるのではなく、企業の経営戦略そのものとして位置づけ、組織的かつ継続的に取り組む経営手法を指します。

従業員の健康状態は、労働生産性、創造性、組織の活力、さらには企業の持続的成長に直結する重要な要素であり、健康経営は「人への投資」を具体化した考え方とも言えます。

また、健康経営の本質は「病気を防ぐこと」だけではありません。

従業員が心身ともに良好な状態で働き続けられる環境を整え、能力を最大限に発揮できる状態を維持・向上させることにあります。

そのため、生活習慣の改善、メンタルヘルス対策、働き方の見直しと並び、日常的な「運動習慣の定着」が極めて重要な要素として位置づけられているのです。

日本では、経済産業省が中心となり、企業に対して健康経営の重要性を発信してきました。その象徴的な施策が「健康経営優良法人認定制度」です。

健康経営が注目される背景として、

  • 少子高齢化による労働力不足
  • 医療費・社会保障費の増大
  • 働き方改革による生産性向上の要請

といったことがあげられます。

これらの社会課題に対し、従業員一人ひとりが心身ともに健康で長く働ける環境を整えることが、企業存続の鍵となっているといっても過言ではありません。

運動不足が企業経営に与える影響

ランニングする人

運動不足は個人の健康問題にとどまらず、企業経営そのものに多面的かつ深刻な影響を及ぼします。

特に、現代のオフィスワーク中心の労働環境では、意識的に体を動かさなければ、日常生活の中で必要な運動量を確保することが極めて難しくなっています。

その結果として生じる影響は、

  • 身体面
  • 精神面
  • 経営面

の3つの側面において、企業に影響を及ぼします。詳しく見ていきます。

【身体的影響】「個人の不調」が「組織のコスト」に変わる

運動不足は、生活習慣病のリスクを高める要因として広く知られています。

これらの疾患は、初期段階では自覚症状が乏しい場合が多く、本人も企業も問題を認識しにくいという特徴があります。

しかし、症状が進行すると、通院や服薬が必要となり、業務への影響が徐々に顕在化していきます。

また、デスクワーク中心の職場では、腰痛や肩こり、首の痛み、膝関節の違和感といった筋骨格系の慢性不調が起こりやすくなります。

これらの不調は生命に直結する病気ではないため軽視されがちですが、

  • 長時間座っていること自体が苦痛になる
  • 集中力が持続しない
  • 痛みや不快感によって作業効率が低下する

といった形で、日常業務に確実な悪影響を及ぼします。

企業にとって重要なのは、こうした身体的不調が医療費の増大だけでなく、

  • 欠勤の増加
  • 遅刻・早退の増加
  • 業務パフォーマンスの低下

といったコストを同時に引き起こす点です。

運動不足による身体的不調は、「個人の体調不良」では済まされず、組織全体の生産性低下という形で経営に跳ね返ってくる問題だといえます。

【メンタルヘルスへの影響】心の不調は静かに広がる

運動は、ストレスを軽減し、気分を安定させる効果を持つことが数多くの研究で示されています。

体を動かすことで血流が改善し、脳内ではリフレッシュ効果をもたらす神経伝達物質が分泌されやすくなります。

そのため、適度な運動習慣を持つ人ほど、ストレスへの耐性が高く、感情のコントロールもしやすい傾向があります。

一方で、運動不足が続くと、

  • ストレスが発散されにくい
  • 疲労感が慢性化する
  • 気分の落ち込みや不安感が強まる

といった状態に陥りやすくなります。特に、長時間労働や対人ストレスが大きい職場環境では、運動不足がメンタル不調の引き金となるケースも少なくありません。

社員のメンタル不調は、結果として、企業にとっては、経験やスキルを持つ人材を失うリスクが高まるだけでなく、職場全体の士気低下や業務負担の偏りといった二次的影響も生じることにつながってしまいます。

心の不調は静かに広がります。

運動促進は、こうしたメンタルヘルス対策において、予防的かつ日常的に取り組める施策として非常に重要な役割を果たします。

【生産性・企業価値への影響】プレゼンティーズムという見えない損失

運動不足による身体的・精神的な不調が最終的に集約されるのが、「生産性の低下」です。特に近年、健康経営の文脈で注目されているのがプレゼンティーズムです。

プレゼンティーズムとは、出勤はしているものの、体調不良やメンタル不調によって本来の能力を十分に発揮できていない状態を指します。

欠勤は数字として把握しやすい一方で、プレゼンティーズムは外から見えにくく、企業側が問題を認識しづらいという特徴があります。

しかし実際には、

  • 判断ミスの増加
  • 作業スピードの低下
  • コミュニケーションの質の低下

などを通じて、企業に大きな損失をもたらします。

プレゼンティーズムによる損失額は、欠勤による損失を大きく上回るともいわれています。

さらに、従業員の健康状態は、企業の対外的評価にも影響します。健康経営への取り組みが不十分な企業は、

  • 採用競争力の低下
  • 離職率の上昇
  • 社会的評価・ブランド価値の低下

といった形で、中長期的な企業価値に影響を受ける可能性があります。

逆に、運動促進を含む健康施策を戦略的に実施している企業は、「働きやすい」「人を大切にする企業」として評価されやすくなります。

健康経営の推進に資する具体的な運動促進施策

ラジねえ。

従業員の運動不足は企業経営にも影響を与えかねないということを前述しました。

そうならないように、健康経営推進の一環として、従業員に対して運動を促進することが大切です。

ただ、単に「運動が大切である」という理念を打ち出すだけではあまり意味がありません。

実際に従業員が行動を変えられる具体策が不可欠です。

また、「特別な人だけが参加する」「一部の健康意識が高い人に偏る」といった状態を避け、できるだけ多くの従業員が無理なく参加できる設計が重要になります。

ここでは、企業が導入しやすく、かつ健康経営の評価にもつながりやすい運動促進施策を、3つ、解説します。

  • 就業前・休憩時間の体操
  • ウォーキング・歩数促進施策
  • フィットネス・外部サービスの活用

詳しく見ていきます。

就業前・休憩時間の体操

朝礼時や午後の休憩時間に、5〜10分程度のラジオ体操やその他の軽い体操、ストレッチを導入する取り組みは、多くの企業で実践されています。

一見すると昔ながらの方法に見えますが、健康経営の観点では非常に理にかなった施策です。

就業前の体操には、

  • 筋肉や関節を目覚めさせ、ケガを予防する
  • 血流を促進し、集中力を高める
  • 一日の仕事に向けた気持ちの切り替えができる

といった効果が期待できます。特に製造業や立ち仕事が多い職場では、安全対策としての意味合いも大きくなります。

また、午後の休憩時間に体操を取り入れることで、

  • 午後特有の眠気やだるさの軽減
  • 長時間同じ姿勢を続けることによる身体負担の緩和
  • 気分転換による業務効率の回復

といった効果が見込まれます。

重要なのは、全員参加を「強制」するのではなく「当たり前の文化」にすることです。

内容はラジオ体操レベルの簡単なもので十分であり、「運動が苦手な人でも抵抗なく参加できる」ことが、長期的な定着につながります。

ウォーキング・歩数促進施策

ウォーキングは、特別な道具や技術を必要とせず、年齢や体力差に関係なく取り組める運動です。

そのため、健康経営における運動促進施策の中でも、最も導入しやすく、参加率が高い手法とされています。

社内ウォーキングイベント

一定期間(例:1か月間)を設定し、歩数や歩行距離を競うイベント形式は、楽しみながら運動量を増やすことができます。

日常の移動がそのまま運動になるため、「運動している感覚が少ない」のも大きなメリットです。

歩数アプリを活用したランキング制度

スマートフォンの歩数計アプリを活用し、

  • 個人ランキング
  • 部署別平均歩数

などを可視化することで、自然な競争意識が生まれます。

ただし、順位付けがストレスにならないよう、「達成型(目標歩数クリア)」を併用する配慮が重要です。

ウォーキング施策は、健康づくりと組織活性化を同時に実現できる点において、健康経営との相性が非常に良い施策といえるでしょう。

フィットネス・外部サービスの活用

全員が同じ運動を好むとは限りません。

そのため、下記のように、一定の自由度を持たせた外部サービスの活用も、健康経営において重要な選択肢となります。

スポーツジム利用補助

ジム利用料の一部を会社が補助することで、運動意欲の高い従業員を後押しできます。費用補助という形であれば、企業側の運営負担も比較的少なく、導入しやすい施策です。

オンラインフィットネスの法人契約

近年特に注目されているのが、オンライン型フィットネスの法人導入です。

  • 在宅勤務者でも利用できる
  • 時間や場所に縛られない
  • ヨガ・ストレッチ・筋トレなど多様なプログラムが選べる

といった点から、ハイブリッドワーク時代の健康経営と非常に相性が良い施策です。

社内レッスン(ヨガ・ピラティス・筋トレなど)

講師を招いて社内でレッスンを行う取り組みは、「会社が本気で健康を考えている」というメッセージを従業員に伝える効果があります。

参加者同士の交流が生まれやすく、エンゲージメント向上にも寄与します。

運動促進施策を成功させるポイント

ストレッチする女性

健康経営の推進につながる従業員への運動促進施策を成功させるポイントは、次の3点です。

  1. 【強制しない】
    運動を義務化すると、かえってストレスになる場合があります。選択制・参加しやすさを重視することが重要です。
  2. 【小さく始めて継続する】
    最初から高い運動量を求めるのではなく、「1日5分」「週1回」といった小さな取り組みから始め、習慣化を目指します。
  3. 【経営層・管理職の参加】
    トップ自らが参加することで、運動促進施策は「会社として本気の取り組み」であるというメッセージになります。

まとめ

健康経営の推進において、運動促進は極めて重要な柱となります。

運動不足は、身体的不調やメンタル不調を引き起こしやすく、それが生産性の低下やプレゼンティーズム、さらには離職リスクの増大といった形で、企業経営に直接的な損失をもたらします。

一方で、運動促進は特別な設備投資や大きなコストを必要とせず、日常の行動を少し見直すだけでも高い効果が期待できる点が大きな特徴です。

特に重要なのは、運動を一時的なイベントとして終わらせるのではなく、従業員が無理なく続けられる形で職場や働き方の中に組み込むことです。

参加のハードルを下げ、楽しさや達成感を感じられる工夫を重ねることで、運動促進は習慣として定着しやすくなります。

企業が従業員の健康を本気で考え、運動促進に継続的に取り組むことは、単なる福利厚生の充実にとどまりません。

それは人材の定着や組織の活力向上、生産性の安定といった形で企業自身に確実に還元され、結果として企業価値の向上にもつながります。

健康経営は一過性の流行ではなく、変化の激しい時代を乗り越えるための持続可能な経営戦略であり、その実践を支える中核的な取り組みが、日常に根づいた運動促進であるといえるでしょう。

私は、健康をテーマにした運動指導・講演会・セミナー、イベント出演等を行っています。

<取得資格>
・全米ヨガアライアンスRYT200
・1級ラジオ体操指導士
・国際ボディメンテナンス協会パーソナルストレッチトレーナー
・スポーツリズムトレーニング協会認定アカデミーコーチ
・基礎心理カウンセラー

大阪府門真市・大阪府寝屋川市を拠点に活動しており、その他エリアも出張可能です!
ラジオ体操やストレッチ・運動講習会、メンタルヘルス講演会、健康イベントを取り入れたいなど、興味がある方・企業団体様は気軽に「ラジねえ。」まで♪

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投稿者プロフィール

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ラジオ体操・スポーツインストラクター
一般社団法人ラジーン代表理事(大阪・関西万博「TEAM EXPO 2025」プログラム/共創パートナー)

企業、自治体、スポーツ競技団体等年間100団体以上と協業し、健康に関する講習会や講演会を各地で実施。TVラジオなどのメディアにも出演し、ラジオ体操を通じて健康・スポーツの普及推進活動を行っています。
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